大阪大学大学院 工学研究科
応用化学専攻 無機材料化学領域
菅研究室

研究内容Research

 原子が凝縮して形成された固体や結晶は、それまで想像もつかなかった物性や機能を発現します。 無機材料化学領域では、遷移金属酸化物などの無機固体に着目し、原子レベルで構造制御したエピタキシャル薄膜やバルク試料などの作製、それらの物性の開発に取り組み、「固体化学」研究を推進しています。

エピタキシャル薄膜をはがして作る二次元物質

 炭素原子1層からなるグラフェンの発見以来、原子層厚さを持つ二次元物質が新しいナノ材料として注目を集めており、その材料開発や電子機能探求が盛んにおこなわれています。 しかしながら、現在広く機能材料として使われている酸化物など、共有結合やイオン結合によって構成原子が三次元的に"強く"結合した物質(三次元物質)からは、二次元物質を作製することは難しいと考えられてきました。
 研究グループでは、エピタキシャル薄膜成長技術によって作製した犠牲層と機能性酸化物からなる積層構造料から、犠牲層を選択的に除去(エッチング)することで、二次元物質の作製に取り組んでいます。 実際、数nm厚さ(結晶格子数個分に相当する厚さ)の二酸化ハフニウムジルコニウムのメンブレン結晶の作製に成功しております。 また作製した極薄メンブレン結晶は、その特性評価から、室温において面直方向に自発分極を持つことも見出しました。 これらの結果は、三次元物質である二酸化ハフニウムジルコニウムから二次元強誘電体が作製できることを示しています。 開発した強誘電性メンブレン結晶は様々な物質上に転写・積層可能です。二次元強誘電体など、「エピタキシャル薄膜をはがして作った二次元物資」の作製そして積層することで、物質機能を開拓します。
  • Y. Shen, et al., Phys. Rev. Mater., 7, 114405 (2023).
  • Y. Shen, et al., Nat. Commun., 15, 4789 (2024).
  • Y Shen, et al., Phys. Rev. Mater., 9, 024411(2025).

水素吸蔵セラミックスの開発

 クリーンな元素である水素を軸とした水素社会実現のためには、水素を含んだセラミックス材料の開発そして学術的理解が不可欠です。 現在広く機能性セラミックス材料として使われている酸化物においても、水素を吸蔵可能な物質は知られていますが、そのメカニズムや設計指針はよくわかっていません。
 研究グループでは、エピタキシャル薄膜やヘテロ構造を活用して、水素吸蔵酸化物の開発や水素吸蔵メカニズムの解明に取り組んでいます。 「界面水素蓄積」や「酸素空孔の規則配列が促進する水素吸蔵」など、水素吸蔵に関連する新しい現象を見出してきました。 このような研究取り組みを通して、水素吸蔵酸化物の開発に取り組んでいます。
  • L. Xie, et al., Adv. Func. Mater., 34, 2410084 (2024).
  • Y. Isoda, et al., Nat. Commun., 16, 56 (2025).
  • S. Fuji, et al., Appl. Phys. Express, 18, 045501 (2025).

イオン伝導性固体

 準備中

環境触媒

 準備中