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研究理念
当研究室では、「基礎と応用を両輪とした研究展開」により、社会の諸問題を解決する革新的な物質・エネルギー変換のための触媒技術と、それを可能にする学術理論の構築・深化を目指しています。
研究内容

1:CO2や低級アルカン、窒素を対象とした分子変換

2:合金やセラミック材料の多元素化による高機能化

3:実験と理論による原子レベルでの反応機構解析

4:電気エネルギーを利用した非従来型の分子変換



1:CO2や低級アルカン、窒素を対象とした分子変換

CO2や窒素、低級アルカン(シェールガスの主成分)をより付加価値の高い分子へと変換する社会的重要度の高い反応を主なターゲットとし、これらを高効率に進められる革新触媒の開発を行っています。
 例えば、化学工業の基幹物質となるプロピレンの製造法の1つである「プロパン脱水素」がその一つです。本反応では、副反応により炭素質が触媒上に析出することで触媒が失活するため、長期耐久性を確保するのが困難であることが問題となっています(工業触媒では数時間枚に再生処理を行っている)。

これに対して我々は合金材料を駆使した新しい触媒設計手法を用いることで、厳しい反応条件でも1か月間安定に機能する驚異的な耐久性を示すプロパン脱水素触媒の開発に成功しています(世界最高性能)。

新規触媒設計手法

「金属間化合物の表面修飾」

PtGa合金(金属間化合物)の表面
および近傍をPbとCaで二重修飾

・副反応を起こす活性点(Pt3)を塞ぐ
・脱水素活性点(Pt1)の機能を高める

 

Nature Commun., 2020, 11, 2838., 特願2021-090373
Angew. Chem. Int. Ed., 2021, 60, 19715-19719.

またCO2の有効利用は、化石資源依存からの脱却と化学産業におけるカーボンニュートラル化を実現するために非常に重要な課題です。当研究室ではCO2をCOやアルコール類へと高効率に変換できる高性能触媒の開発に取り組んでいます。  
 特に、上述のプロパン脱水素をCO2を用いて酸化的に行う「プロパン酸化脱水素」はプロピレン製造とCO2の有効利用、さらには既存脱水素プロセスのカーボンニュートラル化を同時に達成できる革新技術として近年注目されています。


C3H8 + CO2C3H6 + CO + H2O


これに対して我々は、「Pt, Co, Inからなる3元合金触媒」が本反応に対し、①触媒活性、②プロピレン選択性、③耐久性、④CO2利用効率の全てで世界最高性能を示す、驚異的な高機能触媒の開発に成功しました。合金材料は複数の元素を様々な割合で混合できるため、触媒性能のコントロールや高機能化に適しています。

合金触媒のメリット

複数の機能を原子レベル
で隣接させることができる
⇒ 優れた反応場の構築

Pt : プロパンのC–H活性化
Co : CO2のC=O活性化
In : 副反応 (C–C開裂) 抑制

 

Nature Catal., 2022, 5, 55-65.
特願2021-088480, PCT/JP2022/008760


2:合金やセラミック材料の多元素化による高機能化

合金触媒は、2元素や3元素の組み合わせでも優れた性能を発現させることが出来ますが、5元素6元素と更に多元素化することで、より優れた機能・特性を付与することが出来ます。5元素以上の元素から成る固溶体合金はハイエントロピー合金と呼ばれ、混合エントロピーに由来する高い熱的安定性や複数金属に由来する多機能性などが発現し、優れた触媒となることが知られています。

 当研究室ではハイエントロピー合金にさらに規則構造を付与した「ハイエントロピー金属間化合物」(HEI)と呼ばれる新物質を開発し、これらが極めて高性能な触媒として機能することを見出しました。

「秩序構造」 + 「多元素化」

精密制御」×「多機能性」×「安定性」

= 革新的反応場

例えば、2元系の規則性合金(金属間化合物)であるPtGeのPtサイトとGeサイトをそれぞれ周期表上で近い元素(Co/CuおよびGa/Sn)で部分置換することで、PtGe由来の特有の結晶構造・配置を維持したまま合金を多元素化することが出来ます。規則構造を維持しているので、精密な反応場設計が可能になります。

 このHEI触媒:(PtCoCu)(GeGaSn)は、プロパン脱水素において、600℃で2か月間安定に機能するという驚異的な耐久性を示し、上述の世界記録を自身で更新することに成功しました。また同様の高機能化をCO2を用いた酸化脱水素の系にも適応し、耐久性・再利用性を向上することにも成功しています。
 またこれ以外にも、合金材料だけでなく金属酸化物を中心としたセラミック材料も対象に、多元素化による触媒機能の高度化を進めています。

Nature Commun., 2022, 13, 5065.
J. Am. Chem. Soc., 2022, 144, 15944.
Angew. Chem. Int. Ed., 2022, 61, e20220889.


3:実験と理論による原子レベルでの反応機構解析

また当研究室では、「良い触媒がなぜ良いのか」、「悪い触媒がなぜ悪いのか」といった基礎的な問いに対しても徹底的に解明しようとします。それは、その原因が分かることで、「より良い触媒を開発するためのヒント」が得られるからです。そのためのアプローチとして実験だけでなく理論計算も駆使して、触媒上での反応機構・原理を原子レベル、軌道レベルで解明します。

例えば、上述のPtCoIn触媒の例では、PtInにCoを添加することでCO2活性化のエネルギー障壁が大幅に下がること(上図)、またCo3d軌道がその低下に寄与していることを明らかにしています。またこの他にも、合成樹脂の原料となる酢酸ビニルモノマー合成用の工業触媒であるPd-Au合金の機能についての研究も行っており、数十年間も論争となっていたAuの役割について明確な結論を得ることにも成功しています(下図)。

Nature Catal., 2022, 5, 55-65.
J. Am. Chem. Soc., 2023, 145, 2985.


4:電気エネルギーを利用した非従来型の分子変換





・・・ 作 成 中 ・・・






大阪大学大学院工学研究科 応用化学専攻
物質機能科学コース 固体物理化学領域

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