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大阪大学大学院
工学研究科
応用化学専攻
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新しい固体電解質の開発
電解質とはイオンが移動する物質のことです。有名な電解質としては、中学校の教科書に登場するような
塩化ナトリウム(NaCl)等がありますが、これらは溶液になって初めてNa+イオン、
Cl-イオンが自由に動くことができます。このように電解質は溶液、つまり液体という
イメージを持っている人が多いと思います。事実、現在市販されている電池にはこのような液体の
電解質が用いられています。
しかし、電解質が液体であるため、液漏れ、発火、爆発の危険性や、成形が難しいといった欠点を
持っています。
このような欠点を克服する材料として、固体電解質が注目されています。
電解質溶液 |
固体電解質 |
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電離した複数種のイオンが溶液中を移動することで電気を導く |
固体中を1種類のイオンのみが移動することで電気を導く |
固体電解質とは、固体状態のままでイオンが流れる(移動する)物質のことです。
当研究室では、Li+イオンやK+イオンといったアルカリ金属イオンをはじめ、Zr4+イオンやTe4+イオンに至るまで、様々な価数のイオンが移動する固体電解質を開発しています。
特に3価イオンや4価イオンといった高価数の陽イオンは、周囲の陰イオンと極めて強く引き合うために固体中の伝導は不可能とされてきましたが、結晶構造や構成イオンを厳密に設計することにより3価や4価イオン伝導を世界で初めて実証し、その成果は新聞にも取り上げられました。
現在はこれまでの知見を生かして2価イオン伝導体やハロゲン化物イオン伝導体を精力的に開発しています。
イオン伝導体はイオンが移動することにより、同時に電荷も移動することから電気デバイスへの応用も原理上可能です。
固体電解質の用途としては、リチウムイオン二次電池などが有名ですが、ガスセンサ材料としても利用されています。
固体電解質を使った有名なガスセンサとしては、自動車の排ガス中の酸素濃度を調べる「酸素センサ」があります。
このように、あまり知られていませんが、実は固体電解質は身の回りに使われています。
当研究室では、固体電解質を利用した電気デバイスへの応用を目指して、さらに性能のよい固体電解質を作る研究を行っています。
[最近の論文や総説など]
- M. Momai, S. Tamura, and N. Imanaka, "Crystal Structure and Fluoride Ion Conducting Behavior of Nonstoichiometric Rare-earth Oxyfluorides," J. Ceram. Soc. Jpn., in press.
- M. Momai, S. Tamura, and N. Imanaka, "Fluoride Ion Conducting Behavior in Nonstoichiometric Lanthanum Oxyfluoride," Ceram. Int., 49, 1502-1506 (2023).
- N. Imanaka, M.R.I.B. Misran, and N. Nunotani, "Evidence for Enormous Iodide Anion Migration in Lanthanum Oxyiodide-based Solid," Sci. Adv., 7, eabh0812:1-4 (2021).
- M.R.I.B. Misran, S. Tamura, N. Nunotani, and N. Imanaka, "Improvement of Bromide Ion Conduction in a Lanthanum Oxybromide-Based Solid by Adjusting the Electronegativity of the Cation Dopant," Mater. Lett., 286, 129211:1-4 (2021).
- M. Momai, S. Tamura, S. Saeki, and N. Imanaka, "Crystal Phase Control and Ionic Conductivity of Magnesium ion-doped Lanthanum Oxyfluoride," J. Ceram. Soc. Jpn., 128, 863-865 (2020).
- N. Nunotani, M.R.I.B. Misran, M. Inada, T. Uchiyama, Y. Uchimoto, and N. Imanaka, "Structural Environment of Chloride Ion-Conducting Solids Based on Lanthanum Oxychloride," J. Am. Ceram. Soc., 103, 297-303 (2020).
- W.R. Lee, S. Tamura, and N. Imanaka, "Synthesis and Characterization of Divalent Ion Conductors with NASICON-type Structures," J. Asian Ceram. Soc., 7, 221-227 (2019).
- N. Imanaka, N. Nunotani, K. Araki, and M. Yamane, "Exact Identification of Migrating Ion Species in Scandium Tungstate Solid Electrolyte," J. Am. Ceram. Soc., 101, 1025-1028 (2018).
- N. Imanaka, S. Tamura, and T. Itano, "Extraordinarily High Zr4+ Ion Conducting Solid," J. Am. Chem. Soc., 129, 5338-5339 (2007).
- N. Imanaka and Y. Kato, "A New Type of Bromide Anion Conducting Solid," Chem. Commun., 1270-1271 (2003).
- N. Imanaka, Y. Hasegawa, M. Yamaguchi, M. Itaya, S. Tamura, and G. Adachi, "Extraordinary High Trivalent Al3+ Ion Conduction in Solids," Chem. Mater., 14, 4481-4483 (2002).
- N. Imanaka, K. Okamoto, and G. Adachi, "Water-Insoluble Lanthanum Oxychloride-Based Solid Electrolytes with Ultra-High Chloride Ion Conductivity," Angew. Chem.-Int. Edit., 41, 3890-3892 (2002).
- 臭化物イオン伝導性固体, 今中信人, 布谷直義, セラミックス, 56(9), 603-606 (2021).
- 固体内セラミックス中における高価数カチオン伝導の実現, 田村真治, 今中信人, セラミックス, 54, 273-276 (2019).
- 多価イオン伝導体の開発とセンサへの応用, 今中信人, 田村真治, 化学と工業, 65, 390-392 (2012).
- 固体電解質:イオンが電気を運ぶ固体, 田村真治, 今中信人, 化学と教育, 59, 376-377 (2011).
- 4価イオンを伝導種とする固体電解質, 布谷直義, 田村真治, 今中信人, マテリアルインテグレーション, 24(1), 44-50 (2011).
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