Area of Physical Organic Chemistry Course of Materials
Chemistry, Division of Applied Chemistry,
Graduate School of Engineering, Osaka University.
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湾曲芳香族化合物の化学
Chemistry of curved aromatic compounds
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金属ナノクラスターの化学
Chemistry of metal nanoclusters
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動的有機結晶の化学
Dynamics of organic crystals
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レーザーアブレーションの化学
Chemistry of laser ablation
学生への
メッセージ
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Chemistry of curved aromatic compounds
湾曲芳香族化合物
の化学続きを読むベンゼンに代表される芳香族化合物は、「芳香族性」を獲得することで、その独特の反応性や物性を発現しています。このとき、電子は平面な分子構造のおかげで骨格内に広く分布しており、芳香族性の獲得に重要であることが知られています。それではその性質の基となっている平面性を奪い、無理やり曲げて見たらどのようなことが起きるでしょうか?
私たちはこのような単純な発想のもと、球状の芳香族化合物「フラーレン」やお椀状化合物「バッキーボウル」の研究を進めています。特にバッキーボウルは、その独特なお椀構造のために様々なユニークな挙動を示すだけでなく、平面の芳香族化合物では実現できない、新しい機能を有する材料としての利用が期待されています。
私たちは2つのバッキーボウル基本構造のうちのひとつである「スマネン」という分子の合成に世界で初めて成功しました。現在は様々なバッキーボウルの新しい合成法やその性質、さらにはバッキーボウルを用いた機能性材料の開発に関する研究を進めています。最近の具体的な研究例は以下の通りです。- ・スマネンをモチーフとした新物質、超分子構造の構築とその物性研究
- ・新しい構造のバッキーボウル、特にヘテロ原子をドープしたバッキーボウルの合成研究
- ・バッキーボウルの凹面・凸面に起因する2面性(ヤヌス性)を利用した材料開発
- ・水溶性フラーレンを用いた金属含有コロイドの調製とその触媒、材料への応用
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Chemistry of metal nanoclusters
金属ナノクラスター
の化学続きを読む金属をバルク(塊)の状態から小さくしていき、ナノメートルサイズ(クラスター)にすると、全く異なる性質が発現するようになります。例えば、「金」はバルクでは黄金色に輝き続ける、最も腐食(空気酸化)に強い金属の一つですが、ナノメートルサイズの金は、極めて高い空気触媒活性を示すようになります。このように金属ナノクラスターには、バルクでは隠れていた様々な未知の触媒活性・物性が潜んでいます。
さらに、ナノクラスター状態では、複数の金属を様々な組み合わせ・割合で混ぜ合わることにより合金クラスター状態を作ることができます。こうした合金クラスターは、元々の金属とは全く異なる活性を示すことがあります。いわば現代の「錬金術」のようなことが可能なのです。
これらの金属ナノクラスターは、放っておくとバルクに戻ってしまうので、保護剤で安定化させる必要があります。その保護剤の種類でもクラスターの性質を大きく変えることができます。私たちは様々な合成高分子、天然由来高分子を保護剤として用い、金属ナノクラスター触媒、特にグリーンケミストリーに資する触媒の開発を中心に研究をしています。最近の具体的な研究例は以下の通りです。- ・合金ナノクラスター触媒を用いた新規触媒反応開発、特に炭素-フッ素結合活性化などのチャレンジングな反応開発
- ・様々な合成高分子、天然由来高分子、特にキトサン、セルロース類を保護剤として用いた実用的グリーン触媒の開発
- ・触媒反応における、金属ナノクラスター表面と保護材の界面での現象、相互作用の解明に関する研究
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Dynamics of organic crystals
動的有機結晶
の化学続きを読む結晶とは原子や分子やイオンが空間的に規則正しく配列した物質のことをいい、岩塩や水晶、ルビーやサファイアといった宝石も結晶の一種です。構成成分としてより大きな有機化合物の場合も、結晶状態では空間的に繰り返しパターンを持って配列しています。こうした有機結晶は非常に剛直なため、物性発現には有利ですが、逆に柔軟性に欠けるために脆く、圧力をかけるとすぐに崩壊してしまうことがほとんどです。ところが最近、外部からの刺激に対し、しなやかに構造を変化させることの出来る「動的」な有機結晶が注目を集めています。例えば、圧力に対して応答し、発光色が変わるようなシステムも報告されています。
私たちは最近、溶媒などのゲスト分子の取り込み/放出に伴い、結晶状態を保ちながらダイナミックな構造変化を可逆的に示すような一連の動的有機結晶群を見つけました。またこれらの結晶の中には、加熱や光を当てることにより、可逆的に色や構造が変化するものも見出されました。これらの有機結晶は非常にシンプルな有機化合物だけで構成されており、さらにこれらの化合物に化学修飾を施すことで、基本的な動的性質を変えずに更なる特性を付け加えることができると期待されています。最近の具体的な研究例は以下の通りです。- ・溶媒の取り込み/放出に伴う動的有機結晶における細孔性/非細孔性構造変化の解明
- ・動的有機結晶が示す加熱や光照射による構造転移現象の解明、これを利用した材料開発
- ・構成分子の化学修飾による分子取り込み特性のコントロール
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Chemistry of laser ablation
レーザーアブレーション
の化学続きを読むレーザー光を固体と液体の界面に照射することで、プラズマの発生と共に固体表面の構成物質が爆発的に放出されます(アブレーション)。これにより極めて活性な化学種を液体中に発生させることができます。私たちは、この手法を有機化学や錯体化学をベースとした様々な研究に応用することを試みています。
例えば、43億年前の地球環境において、生命進化の鍵を握る最初の原始的な酵素様物質ができるメカニズムの解明に利用しています。すなわちレーザーアブレーションをその当時存在していた天然原子炉による電離放射線効果の一部に見立て、単純な有機化合物存在下、当時の地表に多く存在していた黄鉄鉱(FeS2)に対して液体中でアブレーションすることで、原始的な酵素モデル錯体を発生させ、これらの反応性の評価をしています。その他にも、金属や固体化合物のレーザーアブレーションにより活性ナノ粒子を生成し、それを用いた触媒反応などの検討を行なっています。最近の具体的な研究例は以下の通りです。
- ・冥王代における原始的な酵素様物質発生メカニズムの解明に関する研究
- ・金属、固体化合物表面の液相レーザーアブレーションによるサイズ/モルフォロジー選択的ナノ粒子生成法の開発
- ・レーザー接合技術を用いた新たな合金種の生成とその反応性評価